NULL値の遊蕩

Debauchery and Dissipation on NULL.

No.33

🪓の時は追いかけるのかというと、

#四角 #🪓҇∞⃡🦁̃

 の続き
🪓の前では子供の部分を手放せないままの🦁くんなので後追いする
するけど、🪓の真意(自分が好いているから、先の顛末を見届けるのは辛い)を聞いて、
その想いに気づかずに追いかけた自分はなんと子供なまんまだったんだろうと思うと🦁は己が情けなくなる。

またなにも変わらなかった、変われなかった、と。

ならやはり見送るしかない、のように思考が硬直化している🦁。
「俺がガキなせいで、ごめん」と振り返り、のろのろと帰ろうとする背中を見る🪓。

🪓は、そうだ、と思い出す。

この青年の中に見た孤独な幼子に、かつての己を重ねたから自分は側に居ようと思ったのだと。彼の喪失の悲しみや拗ねている感情に寄り添う──それが、自分の中にもいる幼い孤独を癒す事にもなると感じていたではないか。と。

己の中で大きくなった慕情に、
成長の先を見るのが耐えがたいからと逃げ出すなど、一度弱っているところにつけこんで取り入り頼らせておきながら。あまりにも無責任、非道ではないか。
🪓の内心で罪悪感が抗議する。その抗議には、まだ近くにいたいと願う愚かな恋心が薪をくべている。

せめてもう少し。彼には時間が必要なのだ。大人になるための時間が。安心して過ごせる場所が。
そのためなら自分はどんなものにでもなろう。

いつか過ちを犯しかねないからという理性の導き出した結論を遠ざけ、献身へと思考を切り替える。完全にくべられた薪がその身を支配している事実から目を逸らしつつ、妄信的な信仰の化身として衝動を明後日の方向へ流す。正気からも同時に遠ざかる。

歩き去ろうとする背を捕まえ、あやすように語りかける。すまなかったと。

声を上げないようにひそかに落としていた熱い涙をぬぐう。情けなさと恥ずかしさで内側から逃れようとするのも封じ込めて、その晩は静かに寝かしつけるのだった。

🪓がそのように359°まわって新たな決意を固めていた翌朝。

目を覚ました🦁はすっかり落ち着いていた。泣き疲れて眠りに落ちるのを受け止められた事で、自分が乾いて求めていたものは満たされたように感じた。
何かの垣根が取り払われて、まるで目の前に新たな光景が広がるようだった。

満たされた新しい気持ちで、昨晩🪓がこぼした真意を思い返す。

惚れてしまっているから。
触れて、抱きしめ、…口付けたいと。

苦しげに述べた🪓が脳裏に蘇る。
昨晩までは、驚きが先に立った。考えてもみなかった。
けれども、こうして抱きしめられて眠りについてみると、自分が欲していた何かもやもやとしたものはどうやらこれだったらしいと遅まきながら気がついた。

だがそれだけだろうか?

苦しげな🪓の表情が何度もよぎり、胸を締め付ける。
満たされた気持ちだったのが急に、晴れやかに輝く珠に傷をつけられて毀損されていくようで、思わず隣で眠る頭に触れる。

その悲しみを取り去り、歓びを分かち合いたい。
よろこび。
日頃の、目を細めて微笑む🪓の顔が浮かぶ。
その笑顔に向かって、先ほどよりももっと、上手く言葉にならない感情がわきあがってくる。

触れて、抱きしめ、口づける──
🪓が口にした望みは、自分の今の想いとも重なっているように感じた。


自分が幼すぎたから置いていけなくなって、結果的に気持ちを諦めさせて引き留めることになったんだろうに、その状態からどうやって一人前の男として認めてもらえるのだろうか。幼さに呆れて、もうかつてのようには見れなくなってしまっているのではないだろうか。
タイミングの悪さや己の未熟さ、拙さに歯噛みする。

だが考えても仕方ない。
甘えて頼りしなだれかかるのよりも、ずっと確かに地を踏み締めて立てる気がしている。

ただ一度吐き出す事ができれば、それを受け止めてもらえさえすれば良かったのだ。長い長い試練を越えた今なら、なんでも出来る気がした。

いつかは届くだろう。根拠はないが、🪓が傾けてくれた想いが背を押してくれている。

NOTES

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